あつた人#11
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「草薙神剣」を奉斎するお社ならではの剣の展示館
令和3年10月3日、刀剣展示施設「剣の宝庫 草薙館」を開館しました。多くのメディアに取り上げて頂いたこともあり、開館以来、多くの方々に来館いただいています。熱田神宮は三種の神器の一つ「草薙神剣」(くさなぎのみつるぎ)が祀られていることから、熱田神宮に行けば刀剣が鑑賞できるとお思いの方がたくさんお見えになります。そうした声にお応えするために、「令和」の時代を迎えたことをお祝いする御大典奉祝記念事業の一環として、この「剣の宝庫 草薙館」を建設しました。刀剣は武器として、あるいは美術品として高い価値を持っていますが、私どもはそれだけではなく、草薙神剣への心を寄せた刀剣の奉納が古来より長い歴史の中で引き継がれてきたことに大きな意味があると捉えています。現在、展示館には約450口の刀剣を収蔵していますが、その多くが篤い信仰心をもって神様に捧げられた刀剣です。こうした祈りが込められた刀剣を鑑賞しながら、草薙神剣の精神を会得して頂くことが、熱田神宮ならではの刀剣鑑賞の魅力になっています。とくに最近では、ゲームから始まった刀剣がブームで、刀剣女子と呼ばれる人たちが非常に熱心に刀剣をご覧になりますので、そういう方々にもぜひ、草薙神剣という御神体の剣から感じる精神に触れていただきたいと思います。
崇敬者の心を大切に守り続ける。それが神社の使命
日本中どこへ行っても地域に住む人たちが信仰する「氏神さん」があります。その神社が大きいか、小さいか、あるいはどういう神様をおまつりしているかによって、信仰する場所が少し変わることがあるかもしれませんが、「氏神さん」に変わりはありません。熱田区においても、地元にお住いの方々が熱田神宮を崇敬なさるのはごく自然なことです。その地域、あるいは身近な神様にお参りするというのが日本人の心情じゃないでしょうか。私たちはそういった崇敬者の心を大切に守り続けるという姿勢を大切にしていかなければいけないと改めて感じています。
時代に合わせて進化する神社でありたい
熱田区全体からいうと、いろんな発展への思いが沸いてくるかもしれませんが、神社はいわば地域の心のオアシスですから、発展というよりも「故きを温ねて、新しきを知る」というほうが神社らしくないでしょうか。ただ、「故きを温ねる」けど、廃れてはいけない。神社をこれからも変わらず崇敬して頂くには、時代のニーズに合わせて神社も変わっていく必要があります。古い話になりますが、江戸時代の熱田神宮では、毎年7月7日に、唐櫃から宝物を取り出して風を入れる「神宝の虫干し」という神事がありました。その神事がなくなったのは、それに変わって「宝物館」が誕生し、毎月展示物の入れ替えをして皆さんに見て頂くことになったからです。昔は年に1回、宝物の入れ替の時でしか、宝物を見ることができませんでしたから、それは大きな進化と言えるでしょう。熱田神宮も人々の生き方や価値観、文化に合わせて少しずつ変化してきたのです。これから先もそうあるべきだと思っています。
みなさまへのメッセージ
一人でも多くの方が熱田神宮にお参りをされ、御神体の心を戴くことのできる幸せを感じてお過ごしください。草薙神剣にはあらゆる困難を切り開く力と心があります。昨今の新型コロナウイルス禍をも断ち切って、一日も早く健全な生活を回復され、もとの平和な日々をお迎えいただけること祈念しています。