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現代社会学部

大学教授が語るドラッカー経営の本質(29)


成果責任の理論構造⑥ 成果責任を軸とする統合理論

第24回から、ドラッカーのマネジメント思想を「成果責任」を軸に再構成してきた。そこで明らかになったのは、『マネジメント』『イノベーションと企業家精神』『非営利組織の経営』『経営者の条件』が、独立した経営論ではなく、制度・実践・社会・主体という四水準から一つの理論構造を形成していることである。
制度水準では、組織は社会的成果によって正統化される。実践水準では、その原理がイノベーションという行為へ転換される。社会水準では成果の外部基準が与えられ、主体水準では、その責任を具体的な人間が引き受ける。重要なのは、これらが直線的な段階ではないことである。
社会は成果基準を規定し、制度はそれを原理として受け止め、実践が具体化し、主体が責任を引き受ける。しかし主体は終点ではない。その意思決定は制度を再構成し、制度は再び社会から正統性を問われる。四水準は互いを規定し直す再帰的構造を形成する。
この循環を成立させる媒介概念が「成果責任」である。それは単なる目標達成の責任ではない。制度と社会、制度と実践、制度と主体を接続し、組織が何のために存在し、何を成果とし、その責任を誰が負うのかを統合する規範原理である。
この理解は既存理論にも新たな視点を与える。Meyer & Rowanらの制度理論が社会的期待への適合と正統性を説明するのに対し、成果責任は正統性を社会的価値の創出へ結び付ける。SchumpeterやTeeceの動学理論に対しては、変化への対応を成果責任を維持する制度的要請として捉える。さらに成果責任を主体へ帰属させることで、責任倫理を組織の存立原理へ拡張する。
したがって、ドラッカーのマネジメント思想は単なる経営技法の体系ではない。組織は成果によって正統性を獲得し、社会的基準の変化に応じて成果を問い直し、制度と実践を更新する。この再帰的適応は、組織が社会的機関であり続けるための規範的要請なのである。
もちろん、この四水準構造は最終回答ではない。初期の政治思想や後年の知識社会論との連続性、組織行動における成果責任の作用について、なお検証すべき課題が残る。重要なのは、ドラッカー思想を個別概念の集合ではなく、再帰的な理論構造として読み直す視座を得たことである。
制度が成果を方向づけ、実践が成果を生み、社会がその価値を問い、主体が責任を引き受ける。そして主体の行為が再び制度を変える。この循環を成果責任が媒介することで、四水準は一つの理論構造として統合される。
本稿の核心はこれである。
中部経済新聞 2026年10月21日掲載

Takuya Mizukami
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