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現代社会学部

大学教授が語るドラッカー経営の本質(25)


成果責任の理論構造② 『マネジメント』制度水準の原理

前回は、ドラッカー思想を制度・実践・社会・主体の四水準として捉え、「成果責任」がそれらを接続する媒介概念であることを示した。今回は、その基底となる制度水準を『マネジメント』から検討する。
ここでいう制度とは、組織の仕組みや規則だけではない。企業はいかなる目的によって存在を認められ、何を成果とするのかという存立原理を意味する。したがってマネジメントも、管理技法ではなく、組織を社会的機関として成立させる規範的原理として捉える必要がある。この意味で『マネジメント』は原理層に位置づき、制度水準における成果責任の基底を形成する。
ドラッカーにおいて企業の成果は、組織内部には存在しない。利益や生産性は不可欠だが、それだけで企業の存在が正当化されるわけではない。顧客を創造し、社会に価値をもたらして初めて、企業は社会的機関として存立する。成果とは内部効率ではなく社会に対する貢献であり、制度と社会を接続する媒介項なのである。
この点は組織の存続を社会的承認から捉える制度論とも接続する。Meyer & Rowan(1977)が組織の公式構造を社会的に制度化された規則や期待との関係から捉え、Suchman(1995)が正統性を社会的に構成された規範や価値との適合として整理したように、組織の存立は内部効率だけでは説明できない。ドラッカーの特徴は、その正統性を具体的な社会的成果へ結び付ける点にある。
したがって制度の正統性は所与ではなく、成果によって不断に検証される。社会が求める成果基準が変われば、従来の目的や事業を維持するだけでは正統性を失う。ここで成果責任は、組織内部の業績管理ではなく、制度と社会的正統性を媒介する規範原理となる。
さらに制度は固定的ではない。市場や顧客、社会の価値基準が変化すれば、何を成果とするかも変わる。制度はその変化を受け止め、目的、資源配分、組織を再構成しなければならない。これは単なる戦略的適応ではなく、制度的正統性を再確立する過程である。この「再帰的適応」は、戦略上の対応というより、制度の正統性を問い直す規範的過程と理解できる。
ここに前回で示した再帰的構造への入口がある。制度は実践を方向づける一方、実践による成果から妥当性を問い返される。制度は実践に先立つ原理でありながら、その結果によって再形成されるのである。
『マネジメント』の理論的意義は、経営技法の体系化だけにはない。組織の存在理由を社会的成果に求め、その成果への責任を制度に組み込んだ点にある。制度は成果によって正統化され、成果によって再び問い直される。この循環が、四水準構造を動かす起点となる。
本稿の核心はこれである。
中部経済新聞 2026年9月23日掲載

Takuya Mizukami
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