グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


現代社会学部

大学教授が語るドラッカー経営の本質(22)


経営者の条件② 貢献と強みに基づく成果創造

前回見たように、成果をあげる人はまず時間を知ることから始める。しかし時間を確保しただけでは成果は生まれない。次に問われるのは、その時間を何のために使うのかである。
ここでドラッカーが提示する問いは明快である。
What can I contribute?
(どのような貢献ができるか。)
多くの人は仕事を与えられると、自分の権限や地位、担当業務から考え始める。しかしドラッカーは逆を求める。まず組織が必要としている成果は何かを考え、そのうえで自分は何を貢献できるのかを問えというのである。
この問いは視点を内側から外側へ転換する。自分が何をしたいかではなく、組織や顧客が何を必要としているかを起点とする。成果をあげる人は、自らの仕事を担当業務としてではなく、成果への貢献として捉える。
ドラッカーによれば、知識労働者の仕事は指示だけでは規定できない。成果を生み出すためには、自ら仕事の意味を定義しなければならない。その際の基準となるのが貢献である。
しかし貢献だけでは十分ではない。成果をあげるためには、自らの強みを知らなければならない。
Build on strengths.
(強みの上に築け。)
ドラッカーは一貫して、弱みの克服ではなく強みの活用を重視した。人は誰しも弱みを持つ。だが弱みから成果は生まれない。成果は強みから生まれる。
組織においても同様である。優れた経営者は、人の弱みを管理することに時間を使わない。強みを成果へ結びつけることに集中する。人事の目的もまた、弱点の補正ではなく、強みを活かす配置にある。ドラッカーは、人を変えようとするのではなく、人が持つ強みを成果へ転換することこそマネジメントの役割であると考えた。
この考え方は現代の人的資本経営にも通じる。企業は人材不足を嘆く。しかし本当に問われるべきは、人材が足りないことではなく、既存の強みが十分活かされているかである。組織の成果は、個人の強みと組織の使命が結びついたときに最大化される。
さらにドラッカーは、人間関係についても重要な示唆を与えている。成果をあげる組織は、好かれることを目的としない。互いの強みを理解し、それを成果へ結びつけることを目的とする。調和そのものではなく、成果への貢献が組織運営の基準となる。
貢献を問うことは、自らの視野を広げることである。強みを知ることは、自らの可能性を知ることである。両者が結びつくとき、仕事は単なる業務から成果創造へと変わる。
成果をあげる人は、自分に何が与えられているかを問わない。自分は何を貢献できるかを問い続ける。そして、自らの強みを成果へと結びつける。
本書の核心はこれである。 
中部経済新聞 2026年9月2日掲載

  1. ホーム
  2.  >  現代社会学部
  3.  >  きよし先生が語る「ドラッカー経営の本質」
  4.  >  大学教授が語るドラッカー経営の本質(22)