大学教授が語るドラッカー経営の本質(21)
経営者の条件① 成果創出の基盤としての時間管理
今回から三回にわたり、『経営者の条件』を取り上げる。本書はドラッカーの著作の中でも最も広く読まれている一冊である。しかし、その主題は経営者論ではない。ドラッカーが問うのは、「成果をあげる人(effective executive)」はいかにして生まれるのか、という問題である。
多くの人は、成果をあげる人を才能や資質によって説明しようとする。優れた知性、強い意志、卓越したリーダーシップ。しかしドラッカーは、この考え方を退ける。成果をあげる能力は生まれつきの才能ではない。
Effectiveness can be learned.
(成果をあげる力は習得できる。)
これが本書全体を貫く前提である。
では、その出発点はどこにあるのか。ドラッカーが最初に取り上げるのは知識でも戦略でもない。時間である。
Know Thy Time.
(汝の時間を知れ。)
第2章の表題そのものが、この命令形で示されている。
ドラッカーが時間を出発点に置く理由は明快である。時間は代替も貯蔵もできない。失われた時間は二度と戻らない。Time is the scarcest resource.
(時間は最も希少な資源である。)
にもかかわらず、多くの人は自分の時間がどこへ消えているのかを正確に把握していない。会議、電話、メール、書類作成、移動。忙しさに追われながら、一日の大半が成果と無関係な活動に費やされていることも少なくない。
ここでドラッカーが求めるのは、一般的な時間管理術ではない。手帳術や効率化の工夫でもない。まず現実を知れというのである。自分の時間の使い方を記録し、成果に結びつかない活動を削減する。
特に知識労働においては、この点が決定的に重要となる。知識労働の成果は断片的な時間からは生まれにくい。研究や判断、執筆には集中が必要である。細切れの時間から大きな成果は生まれにくい。成果をあげる人は、まず「集中できる時間」を確保する。
さらに重要なのは、時間の使い方が価値観を映し出すという点である。人はしばしば、自分が何を重視しているかを言葉で語る。しかし実際には、時間の使い方こそが真の優先順位を示している。何に時間を使い、何を後回しにし、何をやめるのか。その選択の積み重ねが成果となって現れる。
本書が今日まで読み継がれてきた理由は、組織論や戦略論に入る前に、まず個人の実践を問うた点にある。どれほど優れた組織に属していても、個人が時間を成果へ結びつけられなければ、マネジメントは機能しない。
成果は努力の量から生まれるのではない。限られた時間の中で、何を選び、何を捨てたかという判断から生まれるのである。成果をあげる人は、まず時間から始める。
問われているのは、時間の管理ではない。成果への責任である。
本書の核心はこれである。
多くの人は、成果をあげる人を才能や資質によって説明しようとする。優れた知性、強い意志、卓越したリーダーシップ。しかしドラッカーは、この考え方を退ける。成果をあげる能力は生まれつきの才能ではない。
Effectiveness can be learned.
(成果をあげる力は習得できる。)
これが本書全体を貫く前提である。
では、その出発点はどこにあるのか。ドラッカーが最初に取り上げるのは知識でも戦略でもない。時間である。
Know Thy Time.
(汝の時間を知れ。)
第2章の表題そのものが、この命令形で示されている。
ドラッカーが時間を出発点に置く理由は明快である。時間は代替も貯蔵もできない。失われた時間は二度と戻らない。Time is the scarcest resource.
(時間は最も希少な資源である。)
にもかかわらず、多くの人は自分の時間がどこへ消えているのかを正確に把握していない。会議、電話、メール、書類作成、移動。忙しさに追われながら、一日の大半が成果と無関係な活動に費やされていることも少なくない。
ここでドラッカーが求めるのは、一般的な時間管理術ではない。手帳術や効率化の工夫でもない。まず現実を知れというのである。自分の時間の使い方を記録し、成果に結びつかない活動を削減する。
特に知識労働においては、この点が決定的に重要となる。知識労働の成果は断片的な時間からは生まれにくい。研究や判断、執筆には集中が必要である。細切れの時間から大きな成果は生まれにくい。成果をあげる人は、まず「集中できる時間」を確保する。
さらに重要なのは、時間の使い方が価値観を映し出すという点である。人はしばしば、自分が何を重視しているかを言葉で語る。しかし実際には、時間の使い方こそが真の優先順位を示している。何に時間を使い、何を後回しにし、何をやめるのか。その選択の積み重ねが成果となって現れる。
本書が今日まで読み継がれてきた理由は、組織論や戦略論に入る前に、まず個人の実践を問うた点にある。どれほど優れた組織に属していても、個人が時間を成果へ結びつけられなければ、マネジメントは機能しない。
成果は努力の量から生まれるのではない。限られた時間の中で、何を選び、何を捨てたかという判断から生まれるのである。成果をあげる人は、まず時間から始める。
問われているのは、時間の管理ではない。成果への責任である。
本書の核心はこれである。
中部経済新聞 2026年8月26日掲載



