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現代社会学部

大学教授が語るドラッカー経営の本質(19)


非営利組織の経営② 使命から成果へのマネジメント

Ⅰ部で示されたのは、使命が第一であるという原理であった。しかし使命は掲げるだけでは組織を動かさない。Ⅱ部とⅢ部が扱うのは、その使命をいかに具体的成果へと転換するかという経営の問題である。ドラッカーは断言する。
Results are on the outside.
(成果は外部にある)
非営利組織の成果は、内部の活動量ではない。会議の回数、事業数、参加者数は努力の指標にすぎない。成果とは、受益者の側で起こった変化である。教育なら学習成果、医療なら健康改善、福祉なら生活の安定である。使命とは理念ではなく、社会に生み出す変化の定義でなければならない。
このために不可欠となるのが、成果を明確に定義する作業である。ドラッカーは、非営利組織こそ「何をもって成果とするのか」を言語化せよと求める。成果が定義されていなければ、資源配分は恣意的になり、優先順位も定まらない。使命と日々の活動との間に断絶が生じ、組織は忙しさの中で方向を見失う。成果の定義は、使命を現場の行動へと結びつける媒介である。
さらに重要なのは、出力(output)と成果(outcome)の区別である。非営利組織は往々にして活動の量を誇る。しかし配布数や相談件数は成果ではない。行動や状態の変化こそが成果である。この区別を曖昧にした瞬間、組織は自己満足に陥る。
Ⅲ部は、成果をあげるための具体的マネジメントを提示する。第一に目標(Objectives)の設定である。目標は抽象的理想ではなく、期限と責任を伴う具体的成果でなければならない。第二に重点化である。すべてを行うことはできない。使命に最も適合する領域へ資源を集中させる。第三に時間管理と意思決定である。何を継続し、何をやめるかを定期的に点検する。
特に重要なのは「やらないことを決める」判断である。善意は拡散しやすい。活動の歴史や情緒が停止を困難にする。しかし成果に結びつかない活動を続ければ、資源は薄まり、使命は弱まる。撤退は失敗ではない。集中の前提である。
また非営利組織は多様な主体によって支えられる。理事会、寄付者、行政、ボランティア。それぞれの期待は必ずしも一致しない。この緊張関係を統合する基準もまた使命である。使命に照らして説明できる決定だけが信頼を生む。説明責任(Accountability)は成果の裏付けによってのみ成立する。
使命は出発点にすぎない。成果を定義し、測定し、選択し、学習し続けるときにのみ、使命は現実となる。非営利組織の経営とは、理念を外部成果へと転換し続ける体系的努力である。加えて、成果の検証は単なる評価作業ではない。それは組織が自らの前提を問い直し、次の行動を設計するための知的作業である。
本書の核心はこれである。 
中部経済新聞 2026年8月5日掲載

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