大学教授が語るドラッカー経営の本質(18)
非営利組織の経営① 使命と成果責任の原理
今回から3回にわたり、NPO研究や非営利組織論の文献で今も定番として参照されている『非営利組織の経営』について詳述する。
マネジメント論は、成果責任を中心に据える体系であった。では、その成果が利益ではなく社会的変化である場合、経営はどのように設計されるべきか。本書はその問いから始まる。
ドラッカーは序文で明言する。
Mission comes first.
(使命が第一である)
非営利組織を語るとき、人はしばしば善意や奉仕精神を強調する。しかし本書は情緒的理解を退ける。非営利組織とは善意の集合ではない。使命を定義し、その使命に対して成果責任を負う社会的制度である。
営利企業においては利益が成果の指標となる。利益は市場の評価であり、経営の健全性を示す尺度である。しかし非営利組織にはその単純な指標がない。だからこそ使命が厳密に定義されなければならない。使命とは理念ではない。社会に生み出す具体的な変化の定義である。誰に対して、どのような成果をもたらすのか。それが曖昧であれば活動は拡散し、資源は消耗する。本書は問う。
What is our mission?
(われわれの使命は何か。)
この問いは修辞ではない。意思決定の基準である。何を行い、何をやめるかを決める原理である。使命が短く、明確で、共有されていなければ、組織は内部調整に終始する。
さらにドラッカーは、「成果は外部にある(Results are on the outside)」と強調する。会議の回数、イベント数、配布資料の枚数は成果ではない。対象者の行動や生活がどう変化したかである。非営利であるからこそ、成果測定は一層厳密でなければならない。利益という単純な指標がない分、成果の検証を怠れば、使命は空洞化する。
ここで使命は統合原理として機能する。非営利組織は多様な動機を持つ人々によって支えられている。ボランティア、専門職、支援者、寄付者。それぞれの動機は必ずしも一致しない。報酬や地位による統制が弱いからこそ、判断の拠り所として使命が不可欠となる。使命は情緒的スローガンではない。行動を一致させるための基準である。
加えて、非営利組織は常に資源制約に直面する。資金は不安定であり、人材は流動的である。だからこそ使命への集中が必要となる。すべてを行うことはできない。優先順位を定め、資源を配分する。その基準が使命である。
第Ⅰ部を通して浮かび上がるのは、非営利組織の経営が理念の表明から始まるのではなく、使命を起点とした厳密な意思決定から始まるという姿勢である。使命を明確にし、それを問い続けることが、持続的成果への前提条件となる。非営利組織は善意によって存在するのではない。成果によって正当化される。使命が第一であるとは、成果責任が第一であるという意味にほかならない。
本書の核心はこれである。
マネジメント論は、成果責任を中心に据える体系であった。では、その成果が利益ではなく社会的変化である場合、経営はどのように設計されるべきか。本書はその問いから始まる。
ドラッカーは序文で明言する。
Mission comes first.
(使命が第一である)
非営利組織を語るとき、人はしばしば善意や奉仕精神を強調する。しかし本書は情緒的理解を退ける。非営利組織とは善意の集合ではない。使命を定義し、その使命に対して成果責任を負う社会的制度である。
営利企業においては利益が成果の指標となる。利益は市場の評価であり、経営の健全性を示す尺度である。しかし非営利組織にはその単純な指標がない。だからこそ使命が厳密に定義されなければならない。使命とは理念ではない。社会に生み出す具体的な変化の定義である。誰に対して、どのような成果をもたらすのか。それが曖昧であれば活動は拡散し、資源は消耗する。本書は問う。
What is our mission?
(われわれの使命は何か。)
この問いは修辞ではない。意思決定の基準である。何を行い、何をやめるかを決める原理である。使命が短く、明確で、共有されていなければ、組織は内部調整に終始する。
さらにドラッカーは、「成果は外部にある(Results are on the outside)」と強調する。会議の回数、イベント数、配布資料の枚数は成果ではない。対象者の行動や生活がどう変化したかである。非営利であるからこそ、成果測定は一層厳密でなければならない。利益という単純な指標がない分、成果の検証を怠れば、使命は空洞化する。
ここで使命は統合原理として機能する。非営利組織は多様な動機を持つ人々によって支えられている。ボランティア、専門職、支援者、寄付者。それぞれの動機は必ずしも一致しない。報酬や地位による統制が弱いからこそ、判断の拠り所として使命が不可欠となる。使命は情緒的スローガンではない。行動を一致させるための基準である。
加えて、非営利組織は常に資源制約に直面する。資金は不安定であり、人材は流動的である。だからこそ使命への集中が必要となる。すべてを行うことはできない。優先順位を定め、資源を配分する。その基準が使命である。
第Ⅰ部を通して浮かび上がるのは、非営利組織の経営が理念の表明から始まるのではなく、使命を起点とした厳密な意思決定から始まるという姿勢である。使命を明確にし、それを問い続けることが、持続的成果への前提条件となる。非営利組織は善意によって存在するのではない。成果によって正当化される。使命が第一であるとは、成果責任が第一であるという意味にほかならない。
本書の核心はこれである。
中部経済新聞 2026年7月29日掲載



