大学教授が語るドラッカー経営の本質(14)
イノベーションと企業家精神② 企業家精神は主体である(=Who)
第Ⅰ部で示されたのは、イノベーションが偶然ではなく体系的に実行できる仕事だという事実であった。では、その体系を誰が担うのか。第Ⅱ部が扱うのは「企業家精神(Entrepreneurship)」である。
ここで本書は、企業家をめぐる通念を退ける。大胆さ、直感、冒険心――それらは本質ではない。ドラッカーがいう企業家精神とは、特定の性格や気質ではなく、変化を意図的に引き受け、成果へと結びつける行動様式である。
Entrepreneurship is neither a science nor an art. It is a practice.
(企業家精神は科学でも芸術でもない。実践である。)
ここでいう「実践」とは再現可能な行動である。したがって企業家精神は創業者に固有の資質ではない。組織の将来に責任を持つ経営者や管理者が、職務として身につけるべき原理である。
前回見たように、イノベーションはマネジメントの中核機能である。しかし、機会を発見し、資源を配分し、実行に移すためには、手続きだけでは不十分である。そこには主体の意思が必要である。既存の前提を疑い、不確実性を引き受け、意思決定を行う主体である。
企業家精神の本質は、リスク選好ではない。不確実性の管理である。変化を脅威としてではなく、機会として捉える認識の転換である。機会を選び、焦点を定め、責任を引き受ける。この一連の行動こそが企業家精神である。
重要なのは、企業家精神が既存組織の内部でこそ必要とされる点である。成功体験はやがて前提となり、前提はやがて硬直化する。組織は自らの成功によって変化への感度を失う。ゆえに企業家精神は、偶然の革新ではなく、意図的に組み込まれなければならない。
ここで問われるのは、「誰が変化を引き受けるのか」である。企業家とは新事業を始める者ではない。変化を機会として組織に取り込む責任を負う者である。現場の管理者であっても、意思決定に関わる以上、その担い手となる。
さらに言えば、企業家精神とは特定の役職に限定されるものではない。組織のあらゆる階層において、意思決定に関与する者すべてが、その担い手となり得る。この広がりこそが、組織全体を変化に適応させる力となる。
企業家精神とは、行動の型であると同時に責任の型である。成果に対する責任を現在だけでなく将来にまで拡張する姿勢である。組織が変化に適応できるかどうかは、この主体の有無によって決まる。
第Ⅱ部の到達点は明確である。企業家精神は資質ではない。学習可能で、組織に設計できる実践である。変化を機会へと転換し、成果責任を持続させるための主体的原理である。
本書の核心はこれである。
ここで本書は、企業家をめぐる通念を退ける。大胆さ、直感、冒険心――それらは本質ではない。ドラッカーがいう企業家精神とは、特定の性格や気質ではなく、変化を意図的に引き受け、成果へと結びつける行動様式である。
Entrepreneurship is neither a science nor an art. It is a practice.
(企業家精神は科学でも芸術でもない。実践である。)
ここでいう「実践」とは再現可能な行動である。したがって企業家精神は創業者に固有の資質ではない。組織の将来に責任を持つ経営者や管理者が、職務として身につけるべき原理である。
前回見たように、イノベーションはマネジメントの中核機能である。しかし、機会を発見し、資源を配分し、実行に移すためには、手続きだけでは不十分である。そこには主体の意思が必要である。既存の前提を疑い、不確実性を引き受け、意思決定を行う主体である。
企業家精神の本質は、リスク選好ではない。不確実性の管理である。変化を脅威としてではなく、機会として捉える認識の転換である。機会を選び、焦点を定め、責任を引き受ける。この一連の行動こそが企業家精神である。
重要なのは、企業家精神が既存組織の内部でこそ必要とされる点である。成功体験はやがて前提となり、前提はやがて硬直化する。組織は自らの成功によって変化への感度を失う。ゆえに企業家精神は、偶然の革新ではなく、意図的に組み込まれなければならない。
ここで問われるのは、「誰が変化を引き受けるのか」である。企業家とは新事業を始める者ではない。変化を機会として組織に取り込む責任を負う者である。現場の管理者であっても、意思決定に関わる以上、その担い手となる。
さらに言えば、企業家精神とは特定の役職に限定されるものではない。組織のあらゆる階層において、意思決定に関与する者すべてが、その担い手となり得る。この広がりこそが、組織全体を変化に適応させる力となる。
企業家精神とは、行動の型であると同時に責任の型である。成果に対する責任を現在だけでなく将来にまで拡張する姿勢である。組織が変化に適応できるかどうかは、この主体の有無によって決まる。
第Ⅱ部の到達点は明確である。企業家精神は資質ではない。学習可能で、組織に設計できる実践である。変化を機会へと転換し、成果責任を持続させるための主体的原理である。
本書の核心はこれである。
中部経済新聞 2026年7月1日掲載



