大学教授が語るドラッカー経営の本質(12)
マネジメント-基本と原則⑩ 正統性と七つの前提:マネジメントの総括
1930年代にマネジメント研究が始まって以来、学界・実務界で当然視されてきた七つの前提がある。本書はまず、それらがもはや現実と適合していないことを示す。危機は技能の不足ではない。思考の前提が古くなっている点にある。
第一に、マネジメントは企業固有の技法だという理解である。しかし今日、病院、大学、行政、NPOなど、あらゆる組織が高度なマネジメントを必要とする。これは、マネジメントが企業に限定されない組織一般の原理であることを意味する。
第二に、正しい組織構造は一つしかないという思い込みである。機能別組織、事業部制、マトリクスはいずれも手段にすぎない。成果に適合しなければ、どの構造も形骸化する。構造は目的に従属する。
第三に、唯一絶対の管理方法が存在するという発想である。人間観が変われば管理のあり方も変わる。知識労働の時代には、命令よりも責任と自律が中心となる。方法は状況依存である。
第四に、技術・市場・ニーズが固定的に結びついているという見方である。実際には技術革新が市場を再定義し、顧客の価値観が産業構造を変える。三者は常に再編される。
第五に、マネジメントの範囲は法的境界で区切られるという理解である。しかし企業の影響力はサプライチェーンや社会環境に及ぶ。責任は法人の枠を越える。
第六に、経営の対象は国内に限定されるという発想である。競争はグローバルに展開し、視野の狭さは戦略の失敗を招く。
第七に、マネジメントは組織内部で完結するという考えである。だが成果は常に外部、すなわち顧客と社会にある。内部効率だけでは存在は正当化されない。
ドラッカーは、これらの再検証を「正統性(Legitimacy)」の問題として総括する。企業は社会に有用な成果を生み出している限りにおいてのみ存在を認められる。正統性とは評判ではなく、社会的承認に値する成果の持続である。
企業の第一責任は経済的成果(Economic Performance)である。しかし利益は条件であって目的ではない。成果が社会的価値と結びつかなければ、正統性は失われる。ゆえに自己規律(Self-Regulation)が不可欠となる。自由な経営は、責任ある行動によってのみ守られる。
The greatest danger in times of turbulence is not the turbulence; it is to act with yesterday’s logic.
(最大の危険は変化そのものではなく、昨日の論理で行動することである。)
本書全体で論じられた目的の明確化、顧客の創造、成果責任、組織設計、戦略、イノベーションは、すべてこの正統性を確保するための体系であった。前提を問い直し、成果と責任を統合し続けること。それがマネジメントの本質である。
本書の核心はこれである。
第一に、マネジメントは企業固有の技法だという理解である。しかし今日、病院、大学、行政、NPOなど、あらゆる組織が高度なマネジメントを必要とする。これは、マネジメントが企業に限定されない組織一般の原理であることを意味する。
第二に、正しい組織構造は一つしかないという思い込みである。機能別組織、事業部制、マトリクスはいずれも手段にすぎない。成果に適合しなければ、どの構造も形骸化する。構造は目的に従属する。
第三に、唯一絶対の管理方法が存在するという発想である。人間観が変われば管理のあり方も変わる。知識労働の時代には、命令よりも責任と自律が中心となる。方法は状況依存である。
第四に、技術・市場・ニーズが固定的に結びついているという見方である。実際には技術革新が市場を再定義し、顧客の価値観が産業構造を変える。三者は常に再編される。
第五に、マネジメントの範囲は法的境界で区切られるという理解である。しかし企業の影響力はサプライチェーンや社会環境に及ぶ。責任は法人の枠を越える。
第六に、経営の対象は国内に限定されるという発想である。競争はグローバルに展開し、視野の狭さは戦略の失敗を招く。
第七に、マネジメントは組織内部で完結するという考えである。だが成果は常に外部、すなわち顧客と社会にある。内部効率だけでは存在は正当化されない。
ドラッカーは、これらの再検証を「正統性(Legitimacy)」の問題として総括する。企業は社会に有用な成果を生み出している限りにおいてのみ存在を認められる。正統性とは評判ではなく、社会的承認に値する成果の持続である。
企業の第一責任は経済的成果(Economic Performance)である。しかし利益は条件であって目的ではない。成果が社会的価値と結びつかなければ、正統性は失われる。ゆえに自己規律(Self-Regulation)が不可欠となる。自由な経営は、責任ある行動によってのみ守られる。
The greatest danger in times of turbulence is not the turbulence; it is to act with yesterday’s logic.
(最大の危険は変化そのものではなく、昨日の論理で行動することである。)
本書全体で論じられた目的の明確化、顧客の創造、成果責任、組織設計、戦略、イノベーションは、すべてこの正統性を確保するための体系であった。前提を問い直し、成果と責任を統合し続けること。それがマネジメントの本質である。
本書の核心はこれである。
中部経済新聞 2026年6月17日掲載



