大学教授が語るドラッカー経営の本質(11)
マネジメント-基本と原則⑨ 戦略とイノベーション:集中と撤退の原理
第9章においてドラッカーは、戦略を分析技法や計画様式としてではなく、成果を持続させるための選択の体系として提示する。戦略とは未来を予測することではない。
まず規模の問題である。企業は往々にして大きさを追求する。しかしドラッカーは、規模は目的ではなく条件であるとする。適正規模を超えれば統合は困難になり、意思決定は遅れ、柔軟性は失われる。逆に、必要な規模に達しなければ市場で意味ある存在になれない。戦略とは、自らの強み(strength)が最大化される規模を見極めることである。大きいことが競争力ではない。適切であることが競争力である。規模は成果を拡大するための手段であって、成果を保証するものではない。規模が統合能力を超えた瞬間、それは強みではなく負担へと変わる。
次に多角化である。多角化はリスク分散ではない。関連性なき拡張は経営資源を分散させる。判断基準は一つである。「What is our business?」という問いに照らして、その事業が同じ論理に属しているかどうかである。共通の顧客、共通の市場、共通の能力がなければ統合は成立しない。多角化は戦略的関連性に基づくべきである。多角化によって管理構造が複雑化し、意思決定が遅れるならば、それは戦略ではなく拡散である。戦略とは「何を増やすか」よりも「何をやめるか」を決めることである。
グローバル化についても同様である。国境を越えること自体は戦略ではない。どの市場で競争し、どの市場から撤退するかを決めることが戦略である。グローバル競争とは価格競争ではなく、価値競争である。顧客(customer)への価値が明確でなければ、地理的拡張は負担となる。市場数の増大は管理負担を増やすだけである。競争優位を確立できる市場を選択し、そこに集中することが戦略である。
成長についてドラッカーは明確である。成長は結果であって目標ではない。彼は警告する。
Growth for its own sake is not justified.
(成長それ自体は正当化されない。)
成長が成果(performance)を高め、顧客価値を増大させるときにのみ意味を持つ。売上が拡大しても、強みが磨かれなければ競争優位は生まれない。成長が内部の複雑化を生み、統合を困難にするならば、それは衰退の始まりである。では戦略の核心は何か。それは集中である。強みに資源を集め、不要な活動から撤退する決断である。そしてその集中を持続的成果へ転換する手段がイノベーションである。
Innovation is the specific instrument of entrepreneurship.
(イノベーションは企業家精神の固有の道具である。)
イノベーションとは発明ではない。既存資源を新しい組み合わせに変え、顧客にとっての価値を再定義する行為である。戦略とは、この革新を体系的に生み出す枠組みである。
戦略なき成長は拡散であり、集中なき多角化は複雑化であり、イノベーションなき戦略は停滞である。集中と革新の循環こそが、戦略の本質である。
本書の核心はこれである。
まず規模の問題である。企業は往々にして大きさを追求する。しかしドラッカーは、規模は目的ではなく条件であるとする。適正規模を超えれば統合は困難になり、意思決定は遅れ、柔軟性は失われる。逆に、必要な規模に達しなければ市場で意味ある存在になれない。戦略とは、自らの強み(strength)が最大化される規模を見極めることである。大きいことが競争力ではない。適切であることが競争力である。規模は成果を拡大するための手段であって、成果を保証するものではない。規模が統合能力を超えた瞬間、それは強みではなく負担へと変わる。
次に多角化である。多角化はリスク分散ではない。関連性なき拡張は経営資源を分散させる。判断基準は一つである。「What is our business?」という問いに照らして、その事業が同じ論理に属しているかどうかである。共通の顧客、共通の市場、共通の能力がなければ統合は成立しない。多角化は戦略的関連性に基づくべきである。多角化によって管理構造が複雑化し、意思決定が遅れるならば、それは戦略ではなく拡散である。戦略とは「何を増やすか」よりも「何をやめるか」を決めることである。
グローバル化についても同様である。国境を越えること自体は戦略ではない。どの市場で競争し、どの市場から撤退するかを決めることが戦略である。グローバル競争とは価格競争ではなく、価値競争である。顧客(customer)への価値が明確でなければ、地理的拡張は負担となる。市場数の増大は管理負担を増やすだけである。競争優位を確立できる市場を選択し、そこに集中することが戦略である。
成長についてドラッカーは明確である。成長は結果であって目標ではない。彼は警告する。
Growth for its own sake is not justified.
(成長それ自体は正当化されない。)
成長が成果(performance)を高め、顧客価値を増大させるときにのみ意味を持つ。売上が拡大しても、強みが磨かれなければ競争優位は生まれない。成長が内部の複雑化を生み、統合を困難にするならば、それは衰退の始まりである。では戦略の核心は何か。それは集中である。強みに資源を集め、不要な活動から撤退する決断である。そしてその集中を持続的成果へ転換する手段がイノベーションである。
Innovation is the specific instrument of entrepreneurship.
(イノベーションは企業家精神の固有の道具である。)
イノベーションとは発明ではない。既存資源を新しい組み合わせに変え、顧客にとっての価値を再定義する行為である。戦略とは、この革新を体系的に生み出す枠組みである。
戦略なき成長は拡散であり、集中なき多角化は複雑化であり、イノベーションなき戦略は停滞である。集中と革新の循環こそが、戦略の本質である。
本書の核心はこれである。
中部経済新聞 2026年6月10日掲載



