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現代社会学部

大学教授が語るドラッカー経営の本質(1)


イントロダクション 不確実な時代に原点を問う

企業経営を取り巻く環境は、ここ数年で大きく様変わりした。市場の変化は激しく、技術革新は産業構造を揺さぶる。人口減少、人材不足、国際情勢の不安定化。企業活動の前提条件は複雑化し、過去の成功体験がそのまま通用する場面は確実に減っている。経営者や管理職は今、「そもそも何のために経営するのか」「この組織は社会にとってどのような存在か」という根源的な問いを避けて通れなくなっている。
この問いに半世紀以上前から真正面から向き合ってきた思想家がピーター・F・ドラッカーである。彼は流行の経営技法を論じたのではない。組織とは何か、人はなぜ組織で働くのか、企業は社会にどのような価値を提供すべきか――その本質を問い続けた。
ドラッカーは明言する。
The purpose of business is to create a customer.
(企業の目的は顧客の創造である。)
利益ではない。規模でもない。顧客を創り出し、その顧客に価値を提供することこそが企業の存在理由である。利益はその結果にすぎない。この順序を取り違えたとき、経営は内部の論理に閉じ、方向を失う。
では顧客の創造とは何か。それは既存需要を奪い合うことではない。顧客がまだ十分に自覚していない価値を提示し、選択肢を広げ、新しい市場を形成することである。顧客は常に変化する。価値の基準も変わる。ゆえに企業は、自らの事業定義を不断に問い直さなければならない。ここにマネジメントの役割がある。
ドラッカーにとってマネジメントとは、効率向上の技術ではない。人が組織を通じて成果を上げ、その成果によって社会に貢献するための実践である。彼は経営を、利益最大化の手段ではなく、成果と責任を引き受ける行為として再定義した。彼はまた言う。
Results are on the outside.
(成果は組織の外部にある。)
内部の努力や管理の巧拙は手段にすぎない。顧客と社会に意味ある価値が生まれているかどうか、それだけが判断基準である。
この原理は、経営を内向きの管理から外向きの責任へと転換させる。内部の効率や手続きの整備に満足していては、組織は自己完結的な存在になる。外部に向けて何を生み出しているかを問い続けることが、組織を生きた存在に保つ条件である。
環境が変わるほど、原点が問われる。原点とは「成果は何か」「顧客は誰か」「社会にどのような価値を生み出しているか」を問い直すことである。本連載では、主要著作を手がかりに、この原点を一つずつ掘り下げていく。経営の技法ではなく、経営の原理を再確認するためである。
問われているのは、この原点である。

中部経済新聞 2026年4月1日掲載

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