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国際文化学部

第2部 宗教が表象する地域


(1)伊勢神宮を軸に読む『徒然草』  メイヨー・クリストファー

[論文要約]
本稿は、兼好法師による十四世紀の古典『徒然草』を、隠遁の廷臣による仏教的省察という通説にとどめず、神・社・祭儀に関わる神祇崇拝にも首尾一貫して関与する著作として読み直すものである。とりわけ伊勢神宮を焦点に据え、兼好が伊勢の中心性を所与の前提とするため、作中の明示的言及がむしろ少なく見える理由を示す。結論として、本作においては、仏教的感性と神祇的感性が皇権の正統性という枠組みの中に共存し、伊勢神宮という聖地は、天皇の身体、居所、諸儀礼を媒介にして理解される。

[著者プロフィール(本書刊行時)]
Christopher M. Mayo―名古屋学院大学国際文化学部教授。専門は日本文化史・日本中世史。主な著書に『Swearing Oaths and Waging War 戦国期武家社会における宗教と戦争』(皇學館大学出版部、二〇一九年)、論文に「日本中世の『暴力』と現代の『教育』」(『交錯する宗教と民族―交流と衝突の比較史』アジア遊学二五七号、勉誠出版、二〇二一年)などがある。

[コラム]
兼好法師の「吉田」像と『徒然草』  メイヨー・クリストファー

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(2)毛利清雅の言論とそこに垣間見える宗教的影響における一考察―大逆事件期(一九一〇〜一九一一)の『牟婁新報』記事分析を中心として  榎澤幸広

[論文要約]
本稿は、毛利清雅や『牟婁新報』の大逆事件期(一九一〇年六月~一九一一年二月)の活動分析を通じて、彼の言論とそこに垣間見える宗教的影響の一端を明らかにすることにある。そのため、①創刊号設立趣旨から地域主義や新仏教運動の視点などを確認し、②大逆事件期の新聞記事構成や記事内容を整理し、①の視点が反映されているか否か分析した。

[著者プロフィール(本書刊行時)]
えのさわ・ゆきひろ―名古屋学院大学現代社会学部教授。専門は憲法学。主な著書に『離島と法―伊豆諸島・小笠原諸島から憲法問題を考える』(法律文化社、二〇一八年)、『公文書は誰のものか?―公文書管理について考えるための入門書』(清末愛砂らと共編、現代人文社、二〇一九年)、『はじめの一歩 法学・憲法〔第2版〕』(松原幸恵・飯島滋明と共編、現代人文社、二〇二四年)などがある。

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(3)多数派移民のマイノリティ性―ハワイの日系コミュニティの地域化を例にして  増田あゆみ

[論文要約]
アメリカ植民下のハワイで多数派人口を擁した日系社会は、白人支配層からその支配を揺るがす大きな存在として警戒された。仏教・日本文化が攻撃され、戦前・戦中をとおしてアメリカ化が強要された。仏教のアメリカ化とともに白人支配層が期待するアメリカに日系社会も順応していった。他方、ハワイの労働者社会(ハワイの地域社会)への順応は日系社会が、宗教の自由とともに見出した真のアメリカ化・地域化になった。

[著者プロフィール(本書刊行時)]
ますた・あゆみ―名古屋学院大学教授。専門は国際政治学、国際関係論。主な論文に「オーストラリアにおける中華系コミュニティと政治活動―多文化主義との関係で」(『神戸法学雑誌』第45巻(第2号)一九九五年)、「多民族社会シンガポールと国際政治」(『国際政治』日本国際政治学会129号、二〇〇二年)、「中国系コミュニティ」(佐竹眞明編『在日外国人と多文化共生』明石書店、二〇一一年)などがある。

[コラム]
ハワイのローカル・カルチャー(Local Culture)  増田あゆみ

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(4)ラダックのアイデンティティ運動とチベット仏教  宮坂 清

[論文要約]
本稿は、インド、ラダックにおけるアイデンティティ運動を、チベット仏教との歴史的、宗教的関係に注目して考察する。ラダックの仏教徒は長年、チベット仏教圏との結びつきやダライ・ラマの権威を背景に、仏教を地域統合の中核として連邦直轄領化を求めてきたが、一方でムスリムとのあいだに緊張を生じさせてきた。

[著者プロフィール(本書刊行時)]
みやさか・きよし―名古屋学院大学国際文化学部准教授。専門は文化人類学、宗教社会学。主な論文に「インド、ラダックにおける仏教ナショナリズムの始まり―カシミール近代仏教徒運動との出会い」(櫻井義秀編『現代中国の宗教変動とアジアのキリスト教』北海道大学出版会、二〇一七年)、「日本におけるチベット仏教―ダライ・ラマ来日時の交流を手がかりに」(『日本における外来宗教の広がり―21世紀の展開を中心に』宗教情報リサーチセンター、二〇一九年)、「ラダックのアイデンティティ運動―もうひとつの『カシミール問題』」(鹿毛敏夫編『交錯する宗教と民族―交流と衝突の比較史』勉誠出版、二〇二一年)などがある。

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ラダックにある仏塔「シャンティー・ストゥーパ」正面の仏陀坐像(インド)
1980年代、当時の日本山妙法寺が建立した巨大な仏塔が、高台からレーの街を見下ろしている。坐像や光背は日本仏教的で下には「立正安国」と書かれているが、下部にはチベット風の雪獅子がみえる。(宮坂論考参照)

ラダックのダライ・ラマ法話会に集まった僧侶たち(インド)
ダライ・ラマによる灌頂や法話会は、数日間にわたり数万人が参加する大イベントである。写真は、2008年、インダス河畔の会場で開催された法話会。遠方、外国からもたくさんの僧侶その他の参加者がやってきていた(宮坂論考参照)