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現代社会学部

「オープンカレッジ」26年名古屋人間力大賞の進化


社会企業家育成の地域力

 社会課題が複雑化し、既存制度や市場の延長線では解決が困難となるなか、地域社会の持続性を左右するのは、課題を自ら引き受け、変化を実装する人材の存在である。とりわけ、社会的価値の創出を目的とし、他者と協働しながら行動を継続する社会企業家の育成は、現代社会における重要な公共的課題となっている。
 経営学者のピーター・F・ドラッカーは、企業家精神を「変化を機会として捉え、体系的に実践する能力」と定義した。ここで重要なのは、企業家精神が営利企業に固有の概念ではなく、社会的領域にも等しく求められる点である。社会課題こそ不確実性が高く、目的と手段の再定義を迫られる領域であり、そこでは企業家精神が不可欠となる。ドラッカーの視点に立てば、社会企業家とは、価値の受益者を市場の顧客に限定せず、社会全体へと拡張した企業家にほかならない。
 この社会企業家的実践を地域において可視化し、評価と学習の対象としてきたのが、名古屋青年会議所が主宰する名古屋人間力大賞(NOYP)である。NOYPは、科学技術、医療・福祉、環境、教育、まちづくりなど多様な分野で社会課題に挑む若者を発掘し、その行動と成果を地域に共有してきた。ここで評価されているのは、短期的成果ではなく、課題に向き合い続ける姿勢と社会を動かす実践力である。表彰は目的ではなく、挑戦を正当に評価し、次の挑戦を誘発するための制度的装置として機能してきた。
 近年の社会企業家研究においても、Deesらが指摘するように、社会企業家は「使命を軸に資源を再結合し、制度の隙間を埋める存在」とされる。NOYPは、まさにその実践を地域に埋め込み、学習可能な形で提示してきた点に特徴がある。その意義を一段と高めているのが、大学との協働である。
 2025年には、本学の学生が主体となり、名古屋青年会議所や企業と連携し、NOYPの魅力と課題を分析するプロジェクトに取り組んだ。学生は過去受賞者への取材を通じて活動の価値を理論と実践の両面から整理し、応募や投票への心理的ハードル、認知構造の課題を明らかにしたうえで、発信や参加の仕組みについて具体的な改善提案を行った。評価される側ではなく、「評価を設計する側」に立つ経験は、社会課題を構造的に把握し、解決を実装へと導く社会企業家的能力を涵養する実践的学習となった。
 この協働は、NOYPを「表彰の場」から「学習と進化の場」へと転換させる。大学は失敗を許容する知的実験の場を提供し、青年会議所は現実社会との接点と責任を担う。両者が補完し合うことで、評価と学習が循環する地域的人材育成モデルが形成される。
 そして26年、NOYPは新たな段階へと踏み出すべき転換点を迎える。表彰の高度化にとどまらず、大学との協働を恒常的な制度として位置付け、発掘・育成・発信を一体化した社会企業家育成の地域装置へと進化させることが求められる。ドラッカーの言葉を借りれば、未来は予測するものではなく、創造するものである。NOYPを軸に、人が育ち、地域が更新され続ける名古屋の未来が、26年、理論と実践の交点から切り拓かれようとしている。
中部経済新聞 2026年6月8日掲載