グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


What's New

「名古屋学院大学総合研究所研究叢書31」が発刊されました


名古屋学院大学総合研究所 研究叢書31 : 2019年3月刊行
鹿毛敏夫著『戦国大名の海外交易』勉誠出版

本書は、16世紀を中心とした戦国時代の歴史を「海」に視座を置き、戦国大名領国が有した「海洋性」の特質と海外交易の展開を支えた「経済力」の実態を解析するとともに、海外諸勢力との外交交渉や交易活動がどのような「相互認識」のもとで繰り広げられていたのか、その心的背景の問題についても考究しています。目次構成は以下の通りです。
序論 ―「海」からの戦国大名論―
第一部 海と船 ―大名領国の海洋性―
第一章 遣明船と相良・大内・大友氏
第二章 中世港町佐賀関と海部の海民文化
第三章  豊後水軍若林家文書の世界
第二部 貿易と豪商 ―西国社会の経済力―
第一章 戦国大名の海洋活動と東南アジア交易
第二章 16世紀九州における豪商の成長と貿易商人化
第三章 硫黄の世紀
第三部 倭寇とキリスト教 ―相互認識のねじれ―
第一章 『抗倭図巻』『倭寇図巻』と大内義長・大友義鎮
第二章 ドイツ・ポルトガルに現存する戦国大名絵画史料
 結論 ―16世紀の時間軸・空間軸における戦国大名の評価―
 戦国大名とその領国を、従来見過ごされてきた「海」の視座から考察し直すことで明らかになった、西国の守護大名や戦国大名クラスの領主が自らの船を建造・保有する船持ち大名であった事実と、その大名の水軍家臣団として組織化された海民的武士の末裔に伝わった文献史料が明証する豊かな「海洋性」の実態は、海に囲まれた日本列島に生きた古代以来の人々が根本的に有した特性のひとつです。
 周知のように、日本では1世紀の奴国や3世紀の邪馬台国の時代から「海外」の国に使者を遣わし物品を交わす外交・交易活動を繰り広げてきました。その移動と輸送の手段は間違いなく「船」であり、その船を操ったのは列島各地の海民勢力です。国家外交という言葉が示すように、外交は本質的に国を代表する「国家権力」(国王や元首等。日本では天皇や将軍等)が行うものですが、古代から現代まで2000年の日本の歴史のなかで、その立場ではない「地域公権力」が外交権を行使した時期がありました。15世紀後半から16世紀の守護大名・戦国大名と、19世紀後半江戸時代末期の西南雄藩(薩摩藩や長州藩等)です。特に前者では、室町将軍が義満以来行使してきた「日本国王」としての対明外交権を奪取した大内氏や細川氏が遣明船を派遣し、大友氏や相良氏も倭寇的遣明船を派遣して、対明交易を実現しました。16世紀後半になると、松浦氏や大友氏、島津氏等が東南アジア諸国との外交・交易活動を繰り広げることになり、本書ではその始期を1570年代に比定しました。
 このように、日本史の時間軸における15・16世紀は、列島の地域社会に生きた人々が実力を積み上げて政治や経済の表舞台に現れ、さらに「海外」勢力を相手とした外交・交易の世界にまで乗り出していった特徴ある時代なのです。そうした時代相のなかで、「船」の操りに長けた海民的武士が大名水軍の中心的構成員として躍動し、また、仲屋氏の事例にみたような流通機構での商機を適確にとらえ大名とも結びついて富商化した商人が、海外交易の一翼を担うことになります。守護大名や戦国大名たちは、その海外交易の原資として、火山の少ない中国大陸ではほとんど産出しない硫黄(サルファー)に着目し、自領産地からの採鉱・輸送システムをいち早く確立して、木造帆船に大量に積み込み海外輸出しました。守護・戦国大名の海外交易を支えた「サルファーラッシュ」の産業構造は、やがて16世紀後半から17世紀になると銀鉱山をおさえた大名たち(毛利氏、豊臣氏、徳川氏等)による「シルバーラッシュ」に転換していくことになるのです。

出版社の紹介ページはこちら
  1. ホーム
  2.  >  What's New
  3.  >  「名古屋学院大学総合研究所研究叢書31」が発刊されました