経済学部
- -「総合政策学科」の社会政策では何を学ぶのですか?
小林 : ひと言でいうのは…。でも、老後の年金だったり、病気やケガをした時の医療保障、お年寄りの介護、失業対策など、すべてもともとは社会政策と深い関係があるんですよ。
- -なんだか重いテーマばっかりですね…。
小林 : そう!やっぱりそう感じますか。社会政策学は、暗い学問だとよく言われるんですよね(笑)。というのも、生活上のリスクを予防したり、起きてしまった社会問題を解決するための公共政策ですからね。重いけど、だからこそ非常に大事。それに、みなさんにとって遠いハナシではなく、けっこう身近な「自分ごと」なんですよ。

- -先生は、ドイツをベースに社会政策の研究をされているとお聞きしました。
小林 : はいそうです。ドイツの社会政策学は、私たちに多くの大切なことを教えてくれます。ドイツのある学者は言いました。「人間は欠陥存在である。だから社会政策は必要なんだ」と。人間は、ほかの何ものよりも豊かだけれど、その分多くのもののお世話にならないと生きてゆけない。ほら。そのへんの木は、そこに立っているだけで「木」でしょう?水をやらなくても雨が降りますからね。人間はそういうわけにはいきません。その代わり、人間は、自律的に自分の生活をコントロールできます。周りのものを、自分の精神で変えていくこともできます。ただ、いつもうまくいくわけではない。いつその安定を失うかわからない。社会政策というのは、欠陥存在である人間が営む不安定な生活を支えるために発展してきたものなんですよ。
- -授業では、どんなことに心がけていらっしゃいますか?
小林 : なるべく、身近な話題をきっかけにするようにしています。たとえば「病院に行くとき持っていく健康保険証には、何が書いてある?」とか「アルバイトにも最低賃金ってあるんだけど、いくらか知ってる?」とかね。

- -ヨーロッパの社会政策は、日本よりも進んでいるのですか?
小林 : 歴史をたどると、これからの日本の指針となることはたくさんありますね。もちろん、よいお手本にもなりえます。けれど逆に、社会政策を充実させすぎたことで失敗した事例も、多くあるんですよね。
- -具体的には、どんなケースがあるのですか。
小林 : たとえば「英国病」って知ってますか?イギリスでは、1960年代、高齢者の年金や医療を充実させるために税金の負担が重くなり過ぎて、若い人が働く気をなくしてしまったんです。社会保障のバランスを失うと、社会の活力まで失うという例です。同じようなことが、70年代のスウェーデンでも起こりました。福祉を充実させたら高齢者の自殺率が高くなってしまった。意外でしょう?自分の人生を福祉に依存させすぎてしまったんですね。社会が成熟してくるとこんなことも起こる。ただ、やればイイってモンじゃあない。これからの日本にとって大切な教訓だと思います。

- -高校生には、何を伝えたいですか?
小林 : 社会政策をベースに言わせてもらうと、これからの大学生活では、大きな自由があるからこそ、「働くこと」の意味に真剣に向きあってほしいですね。お金のため?家族を養うため?社会のため?自分のため?答えはひとつじゃない。アルバイトに精を出したからといって気づくわけでもない。むしろ「大切な自由時間」を有意義に過ごすことで見えてくるはず。自分なりの答えを見つけてほしいと思っています。「働くこと」と自由時間、そこで「よく生きよう」とする若い人が増えれば、社会の政策だってどんどんよくなるんじゃないか。こんなこと一緒に考えていけたらいいですね。

PROFILE小林 甲一 総合政策学科
ゼミのあと学生に声をかけて、研究室でゆっくり話をする時間が好きだという。趣味は、研究を兼ねた博覧会めぐり。これまで国内外で足を運んだ博覧会は、20を下らない。



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